「食品、添加物等の規格基準」(昭和三十四年十二月二十八日)(厚生省告示第三百七十号) P10

○ 氷菓


1 氷菓の成分規格
(1) 氷菓は,その融解水1ml中の細菌数(はつ酵乳又は乳酸菌飲料を原料として使用したものにあつては,乳酸菌又は酵母以外の細菌の数)が,10,000以下でなければならない。
(2) 氷菓は,大腸菌群が陰性でなければならない。
(3) 氷菓の細菌数の測定法および大腸菌群試験法はつぎのとおりとする。
1.検体の採取および試料の調製
検体は,製品が成分規格に適合するかしないかを判断することのできる数量を滅菌採取器具を用いて無菌的に滅菌採取ビンにとり,なるべくその温度を保つて保持し,または運搬し,採取後4時間以内に試験を供しなくてはならない。
試料は,検体を40°以下でなるべく短時間で全部融解させ,その10mlを共センビンにとつたものに,細菌数(生菌数)の測定に関しては滅菌生理食塩水90mlを加えて10倍希釈したものを1平板に30〜300の集落がえられるように滅菌生理食塩水で段階希釈したもの,大腸菌群の試験に関しては滅菌生理食塩水90mlを加えて10倍希釈したものとする。
2.細菌数(生菌数)の測定法
各試料について滅菌ペトリザラ2枚以上を用意し,滅菌ピペツトを用いて対応する滅菌ペトリザラに当該試料1mlずつを正確にとり,これらにあらかじめ加温して溶かし43〜45°の温度に保持した標準寒天培養基(第1 食品の部D 各条の項の○ 氷雪の1 氷雪の成分規格の(2)の2.細菌数(生菌数)の測定法に規定するものをいう。)約15mlを加え,静かに回転し,前後左右に傾斜して混合し,冷却凝固させる。この操作は試料をペトリザラにとつてから20分以内に完了させなければならない。培養基が凝固したならば,倒置して35°(上下1.0°の余裕を認める。)の温度で48時間(前後3時間の余裕を認める。)培養する。この場合,検体の希釈に用いた滅菌生理食塩水1mlに,試料に加えた培養基と同一同量の培養基を混合し,静かに回転し,以下試料の場合と同様に操作して培養したものを対照としペトリザラ,生理食塩水および培養基が無菌であつたことならびに操作が完全であつたことを確めなければならない。
ペトリザラは直径9〜10cm深さは1.5cmとする。
細菌数の算定は,つぎの要領による。
1平板の集落数30〜300のもの(1平板の集落数が30〜300のものがないときは拡散集落の部分が平板の2分の1以下で他の集落がよく分散していて算定に支障のないもの)の集落数を集落計算器を用いて常に一定した光線の下で計測し,希釈倍率が同一な試料ごとに各平板の集落数を平均した値に,当該試料に係る希釈倍率を乗じてえた数値を加算し,有効であつた平板の希釈倍率別による種類の数で除してえた値を細菌数とする。ただし,つぎの場合はこれを試験室内事故とする。
a 集落の発生のなかつた場合
b 拡散集落の部分が平板の2分の1を越えた場合
c 汚染されたことが明らかなもの
d その他不適当と思われるもの
3.大腸菌群試験法
滅菌ペトリザラ2枚を用意し,それぞれに滅菌ピペツトを用いて試料1mlを正確にとる。これにあらかじめ加温して溶かし43〜45°の温度を保持させたデソキシコーレイト寒天培養基を10〜15mlの量を加え,静かに回転し,前後左右に傾斜して混合し,冷却凝固させる。培養基が凝固した後,その表面にさらに同培養基を3〜4mlの量を加えて冷却凝固させる。この操作は試料をペトリザラにとつてから20分以内に完了させなければならない。
培養基が凝固したならば,倒置して35°(上下1.0°の余裕を認める。)の温度で20時間(前後2時間の余裕を認める。)培養して集落の有無を観察する。暗赤色の集落を認めたものは推定試験陽性とし,該当しないものは推定試験陰性とする。
推定試験が陽性の場合は,当該集落の代表的なものをE・M・B・培養基に塗抹とまつし,35°(上下1.0°の余裕を認める。)の温度で24時間(前後2時間の余裕を認める。)培養した後,大腸菌群の定型的集落(定型的集落がない場合は,定型的集落に類似した集落2以上)を釣ちよう菌して,乳糖ブイヨン発酵管および寒天斜面にそれぞれ移植する(定型的集落に類似した集落を釣ちよう菌した場合は各集落から釣ちよう菌したもの別にそれぞれ移植する。)。
乳糖ブイヨン発酵管は35°(上下1.0°の余裕を認める。)の温度で48時間(前後3時間の余裕を認める。),寒天斜面は35°(上下1.0°の余裕を認める。)の温度で24時間培養し,乳糖ブイヨン発酵管においてガス発生を確認した場合に,これと相対する寒天斜面培養について鏡検し,グラム陰性無芽胞桿かん菌を認めた場合を大腸菌群陽性とする。
ペトリザラは直径9〜10cm,深さ1.5cmとする。
デソキシコーレイト寒天培養基 ペプトン10g,寒天15〜25g,乳糖10g,食塩5g,クエン酸鉄アンモニウム2gおよびリン酸一カリウム2gを水1,000mlに加熱して溶かし,これをろ過したロ液をpH7.3〜7.5に修正し,これにデソキシコール酸ナトリウム1gおよびニユートラル・レツド33mgを加えて,さらにpH7.3〜7.5に修正する。


2 氷菓の製造基準及び保存基準
(1) 氷菓の原水は,飲用適の水でなければならない。
(2) 氷菓の原料(はつ酵乳及び乳酸菌飲料を除く。)は,68°で30分間加熱殺菌するか,またはこれと同等以上の殺菌効果を有する方法で殺菌しなければならない。
(3) 氷結管から氷菓を抜きとる場合に,その外部を加温するために使用する水は,飲用適の流水でなければならない。
(4) 氷菓を容器包装に分注する場合は,分注機械を用い,打栓せんする場合は,打栓せん機械を用いなければならない。
(5) 氷菓の融解水は,氷菓の原料としてはならない。ただし,(2)による加熱殺菌をしたものは,この限りでない。
(6) 氷菓の器具又は容器包装は,使用する前に適当な方法で洗浄し,かつ,殺菌したものであること。ただし,既に洗浄され,かつ,殺菌された容器包装又は殺菌効果を有する製造方法で製造された容器包装であつて,使用されるまでに汚染されるおそれのないように取り扱われたものにあつては,この限りでない。
(7) 氷菓を保存する場合に使用する容器は,適当な方法で殺菌したものでなければならない。
(8) 原料および製品は,有蓋がいの容器に貯蔵し,取扱い中手指を直接原料および製品に接触させてはならない。