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タイトル瓶詰めの肉味噌 常温での販売について
記事No3549
投稿日: 2022/05/24(Tue) 16:03
投稿者久原史幹
個人で食品の瓶詰め製造をしている者です。
今、新商品を作っているところです。
肉味噌を瓶詰め、常温販売したいのですが、
PHは調整したくなく、水分活性値を0.94 以下
にしたいです。
味噌の水分活性は低いので、問題ないとして
火を良く通した肉を入れて、砂糖を入れれば、
水分活性は低いままで、理論上は常温保存できる物でしょうか?

タイトルRe: 瓶詰めの肉味噌 常温での販売について
記事No3550
投稿日: 2022/05/25(Wed) 01:43
投稿者おっと
 確かに味噌は常温で販売されていますね。資料を見てみると代表的な米味噌の性状は次のような感じらしいです。

 pH :4.8〜5.2
 塩分濃度:11%〜13%
 水分活性:0.68 〜 0.80

 つまり、味噌は細菌にとってストレス環境(食塩、水分活性、pH など)であるため栄養型細菌は増殖できませんが、バチルス属等の芽胞形成細菌は休眠状態で存在するということです。

 久原様が計画されている肉味噌のレシピは分からないのですが、試みにネットで調べてみました。

肉味噌のレシピの例(主要材料のみ)

例@ 豚ひき肉200g、味噌65g、砂糖大さじ18g
例A 豚ひき肉300g、味噌56g、砂糖大さじ18〜27g

 これを見ると肉味噌は味噌の3倍から5倍の量の豚ひき肉を使って作るもののようです。
 したがって、この時の塩分濃度は計算が間違ってなければ、おおよそ2〜3%あたりになりそうです。

> 水分活性値を0.94 以下にしたいです。

 この水分活性 0.94 以下というのはボツリヌス菌が増殖できない水分ですね。

 資料によると、水分活性 0.94にするには食塩水で約9.4%、砂糖で48%にすれば良いとのことです。

 今回の事例では食塩と砂糖の混合物になりますので、砂糖は48%よりも幾分少ない量ですみそうです。

 なお、黄色ブドウ球菌は水分活性が0.92以上で増殖します。
 また、水分活性 0.96以下ではブドウ球菌は生育してもエンテロトキシンは産生されないという報告もあります。

 要は砂糖漬けになるほど砂糖の量を増やせば、食品が常温保存できるのは間違いないようです。

--- 資料 ---

◇ 第3回 みそと病原細菌/タケヤ
https://www.takeya-miso.co.jp/column/003_2.html

◇ 味噌製造における「HACCP の考え方を取り入れた衛生管理」のための手引書
https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000544020.pdf

◇ 肉味噌のレシピ(ご飯やレタスに合わせて)/白ごはん.com
https://www.sirogohan.com/recipe/nikumiso/

◇ 旨味の塊!肉味噌の作り方/macaroni
https://macaro-ni.jp/45750

◇ 食品加工と微生物 その25 水分活性の調整による微生物制御
https://www.asama-chemical.co.jp/PN/P102.PDF

タイトルRe: 瓶詰めの肉味噌 常温での販売について
記事No3604
投稿日: 2023/03/05(Sun) 18:44
投稿者おっと
ある文献を読んでいましたら、肉味噌瓶詰にカビが生えた事例が出ていました。
この商品は、

塩分濃度:約 4.4%
水分活性:約 0.90
pH   :約 5.4  であったようです。

これですと、水分活性値は 0.94以下ですから、ボツリヌスは生育しないようです。
カビは味噌由来の Aspergillus 属カビと推定され、原因は瓶詰め後の殺菌不良であったということです。

話は戻りますが、肉味噌瓶詰も佃煮を作る要領で水分を飛ばせば水分活性も下がります。
このカビが生えた商品は常温で5カ月、開封後10℃以下で販売されています。