(2010/12/11最終更新)(2009.07.19 )
資料 15 ヒスタミンによる食中毒事例(魚種別年次変化) 2000年〜2009年
1 ヒスタミン中毒はどんな魚で起きているのか?
過去10年間にヒスタミン食中毒の原因となった魚種別割合を図1に示しました。
マグロおよびカジキマグロで事件の半分が起きていたことがわかります。
図1 ヒスタミン食中毒魚種別発生状況(2000年〜2009年 全国)
ヒスタミン食中毒は平成20年に例年に比べ多く起こりましたが、平成21年には4年前の数に戻っているようです。
魚種別の変化を表1にまとめました。年ごとの件数を図2に示しました。表1 魚種別年次変化
00年 01年 02年 03年 04年 05年 06年 07年 08年 09年 計 マグロ 1 3 2 4 1 3 3 1 5 4 27 カジキ 3 1 3 4 6 4 21 サバ 2 1 1 4 2 1 2 13 ブリ 1 3 2 2 2 10 サンマ 1 1 2 1 1 1 1 8 イワシ 1 1 1 1 3 7 カツオ 3 1 4 シイラ 2 1 3 アジ 1 1 2 計 3 4 7 8 8 10 14 7 22 12 95
図2 ヒスタミン食中毒年次変化(2000年〜2009年)
ヒスタミン食中毒は冷凍食材や塩干ものが原因となりやすいのですが、
発生月を調べてみると夏〜秋型食中毒であることが分かります。
表2 ヒスタミン食中毒月別発生状況(平成12年から平成21年の累計)
魚種 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 計 マグロ 1 2 2 3 1 1 5 3 3 3 3 1 28 カジキ 1 1 1 3 4 3 2 3 1 1 20 サバ 2 2 4 2 2 1 13 ブリ 2 2 3 3 10 サンマ 1 1 1 5 8 イワシ 1 1 1 1 1 1 1 7 カツオ 2 1 1 4 シイラ 1 1 1 3 アジ 1 1 2 計 2 6 6 5 6 11 14 9 13 15 6 2 95
図3 ヒスタミン食中毒月別発生状況(2000年〜2008年)
表3 ヒスタミン食中毒の原因となった魚種別調理例(2005年〜2009年)
注:(数字)は事例数
魚種 調理例 マグロ 照焼(2)、フライ(2)、バター焼き、マヨネーズ焼、ケチャップ和え、
竜田揚げ、鮪丼、ハンバーグカジキマグロ ムニエル(2)、照焼、揚げ漬け、甘辛がらめ、冷凍味付け、
竜田揚げ、フライ、さく取りイワシ すり身揚げ、つくね揚げ、つみれ汁 カツオ 照焼、味噌漬焼、こうじ漬、たたき ブリ 照焼、西京味噌漬、塩焼き サンマ すり身揚げ、南蛮漬け、サンマハンバーグ、糠漬け サバ 竜田揚げ、開き、切り身 アジ 干物、メアジ開き
備考:
1 データの出所:厚生労働省ホームページで発表の食中毒発生事例(平成12年から平成21年)の病因物質(化学物質−化学物質)を選び出し原因食品欄から魚介類が含まれヒスタミン中毒と推定される事例を集計しました。
2 魚種については、原因食品として記載された名前であり、分類学的な正確さには欠けると思われます。
なお、便宜上次のようにしました。
ブリはツバス、ワラサ、イナダ、ハマチを含む。イワシはウルメイワシを含む。マグロはキハダマグロを含む。アジはムロアジ及びメアジ。
5 ヒスタミン食中毒を予防するには?
特徴
☆ ヒスタミン食中毒は、魚肉などに存在するアミノ酸の一種であるヒスチジンから、微生物(ヒスタミン産生菌)によって産生蓄積されたヒスタミンによるアレルギー様食中毒である。
☆ 喫食して30分から1時間後に顔面紅潮(特に口のまわりや耳たぶが紅潮)、じんま疹、頭痛、発熱といったアレルギー様の症状が出る。概ね6時間から10時間で回復する。
☆ 一般 的には、魚肉中に50mg/100g以上のヒスタミンが蓄積されると食中毒が起こるとされていますが、感受性の高い人ならば5mg/100gで発生する場合もあります。
☆ 低温好塩性菌のP.phosphoreum は、2.5℃貯蔵の魚肉中に多量(61〜144mg/100g)のヒスタミンをつくることが確認されており、低温であっても長期間の保存は危険である
予防のためには
○ 新鮮な魚を購入すること。
○ 保存するときは冷凍し、長期間の冷蔵を避けること。絶対に室温で放置しないこと。
○ 塩干ものは乾燥させるための時間、漬け魚(照り焼きやまぐろ生姜など)には調味液が浸透するための時間が必要でハイリスク食品です。特に原料魚の鮮度が要求されます。
○ 一度産生され、蓄積されたヒスタミンは加熱によって分解できないので、古くなったと思ったら食べないこと。
○ 魚介類および魚介加工品の検食のとき、唇や舌先にピリピリとした刺激を感じた場合は、ヒスタミンが産生されているおそれがあるので速やかに給食を中止する。
参考文献:
1)千葉美子、林都香、福原郁子、蝟ホ、山口友美、長谷部洋、氏家愛子、濱名徹:化学物質による食中毒事例および食品苦情事例:宮城県保健環境センター年報 第27 号 104-106(2009)
2)齊藤智子:アレルギー様食中毒とは ヒスタミンによる最近の動向と対策 食と健康(2009.8)
3)鮫島陽人ら 冷凍カツオの処理工程におけるヒスタミンの挙動 鹿児島県工業技術センター研究報告 35-38 No14(2000)
4)独立行政法人日本スポーツ振興センター学校安全部食の安全課 ヒスタミン食中毒の特徴と予防方法
5)笠間憲太郎:低温好塩性発光細菌Photobacterium phosphoreum
のヒスタミン生成に関する研究
6)藤井建夫:ヒスタミン食中毒の現状と対策:(2009)
7)神吉 政史、吉田 綾子:ヒスタミン食中毒(アレルギー様食中毒):公衛研ニュース No13(2001)
8)登田美桜,山本 都,畝山智香子,森川 馨:国内外におけるヒスタミン食中毒 国立衛研報 第127号(2009)