(2010.11.15更新)

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資料14 ノロウイルス集団発生月別報告数(2005年9月〜2010年3月)

 ノロウイルスによる食中毒は後を絶たない。国立感染症研究所の感染症情報センター病原微生物検出情報には地方衛生研究所からの検出状況が毎日追加更新されている。 ここでは経路別、ウイルス別、Genogroup(*1)別などの集計があり興味深い。

☆ ノロウイルス 遺伝子型(ゲノタイプ) GII/2 の台頭かGU/4型の変異株の登場か?

 2006年〜2007年にかけてノロウイルスの爆発的な流行はゲノタイプGU/4によるものであった。このあともこのGU/4がノロウイルス感染症の主役であった。
 2009年9月〜2010年3月に発生したノロウイルス集団感染事例が369事例のうちGII/4 が58事例、GII/2 が79事例となっておりGU/2の増加が目を引く。(*2)
 病原微生物検出情報のノロウイルス感染集団発生 2009/10シーズン(2010年4月1日現在報告数)中の表1.ノロウイルス感染集団発生月別報告数,2008年9月〜2010年3月から
 ゲノタイプGU/4とGU/2を取り出し分かりやすいようにグラフ化したものが次の図である。(*2)


 (病原微生物検出情報:2010年4月1日報告数による)

 
 このGII/4とGII/2という二つのタイプの過去の状況をみるため、シーズン別胃腸炎ウイルス検出情報(*3)からGII/4とGII/2を抜き出しグラフ化した。
 2006/2007シーズンにGII/4は爆発的に増え、現在に続いているのがわかる。
 GII/2は2009/2010シーズンに顕著に増加した。しかし、現在の処GU/4の反転攻勢にあいGU/4 を抜き去る勢いは見られないようにみえる。(*4)


(病原微生物検出情報 : 2010年11月11日作成)
1シーズン:9月→8月

2006年〜2007年にかけてのノロウイルスの流行はゲノタイプGU/4によるものであり、世界中の人々がこのタイプに免疫を持たなかったため爆発的な流行となった。(*5)
2008/2009シーズンのノロウイルス感染症の特に秋口の低下は巷では新型インフルエンザによる衛生意識の向上(手洗いの励行)といわれているが、このところの流行の主役となっていた、GU/4
2006b変異型が衰勢にあるともいえ、2010春先からの、GU/4の盛り返しはあらたな変異型の登場を意味しているのではないだろうか。(*6)

まとめ:ノロウイルスのゲノタイプは36種類以上あるといわれ(*1)それらも変異を繰り返しながら様々なタイプのものが入れ替わり立ち替わり感染をひきおこしている。
様々なタイプの総和として下図のような発生件数の増減をみせているといえる。


 

文献:
 *1 病原微生物検出情報ノロウイルスの遺伝子型
 *2 病原微生物検出情報ノロウイルス感染集団発生 2009/10シーズン(2010年4月1日現在報告数)
 *3 病原微生物検出情報シーズン別胃腸炎ウイルス検出状況、 2000/01〜2010/11シーズン
 *4 大阪府公衆衛生研究所 病原体詳細情報
 *5 病原微生物検出情報2006秋冬シーズンに流行したノロウイルスGII/4株のゲノム解析
 *6 田村務(新潟県保健環境科学研究所ウイルス科) 食中毒の原因とその検査法について U ノロウイルスによる胃腸炎の流行とウイルスの変異


☆ ノロウイルス集団発生月別報告数(感染経路別 2005年9月〜2009年3月 (2009.05.21作成)






出処:病原微生物検出情報
ノロウイルス感染集団発生  

2006/07シーズン 2007/08シーズン 2008/09シーズン から作成