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(作成 2015/03/03 、更新2015/6/26)

資料34 カンピロバクターの逆襲 - <大阪府食中毒速報に見る平成26年に発生した食中毒の特徴>

 大阪府食中毒発生状況速報(参考1)をみると、一時減少していたカンピロバクターの件数が平成25年から増加に転じ、平成26年には件数、患者数ともトップになった。
 平成24年のカンピロバクターの件数減は平成23年4月の焼肉チェーン店のユッケによる食中毒に端を発した肉の生食自粛の流れによるものと思われたが、「のど元過ぎれば…」ということで、近年、鶏肉の生食が広がっていると感じる。また、牛肉に較べ安価な鶏肉を扱う居酒屋が増え繁盛しているという実感がある。鶏肉をたたきや刺身で食べられる機会が増加したことがカンピロバクター食中毒の増加を招いているように思う。
 鶏肉の代表的な汚染菌であるサルモネラは、定期的な収去検査で高い汚染率を示すが食中毒事件数は少なく推移している。これはサルモネラの方が発症必要菌数が多く、カンピロバクターが少量の菌でも発症することが原因の一つだと推察している。
ちなみに、ミンチ肉(鶏)のカンピロバクターは8検体中5検体、サルモネラは31検体中15検体である。(参考:平成 26 年度食品の食中毒菌汚染実態調査の結果について -厚労省-
 

 ノロウイルスは平成24年に遺伝子タイプGII/4の新しい変異株の登場により小流行を見たが、その後減少に転じている。ただし、この統計には出ていないが感染症として扱われているケースも多く経験する。(参考3)

 クドアは国内の養殖ヒラメの対策が進み減少すると考えていたが、件数は横ばいである。この原因として輸入ヒラメの一部にクドアを保有するものが混入する例もあるようである。

表1 近年の食中毒事件数の推移(大阪府・主要菌)

H20年 H21年 H22年 H23年 H24年 H25年 H26年
件数 患者数 件数 患者数 件数 患者数 件数 患者数 件数 患者数 件数 患者数 件数 患者数
 総 数 96 2071 69 1028 72 1228 60 1974 69 916 64 958 75 755
 病因物質判明 88 1943 61 920 65 1155 57 1855 67 889 94 958 75 755
 細菌 サルモネラ 12 471 11 133 11 179 7 219 4 20 1 6 2 10
腸管出血性大腸菌 1 0 3 6 0 0 2 7 1 28 1 2 1 7
カンピロバクター 38 406 22 165 30 181 27 212 9 35 23 126 41 213
ウイルス ノロウイルス 17 370 14 431 16 440 13 332 29 569 19 591 12 210
寄生虫 クドア・セプテンプンクタータ 0 0 0 0 0 0 0 0 9 55 4 46 8 72


カンピロバクター食中毒の増加は大阪府での特異的なものかどうか厚労省速報で確認したところ、次のとおり全国的な傾向であった。

発生件数(全国) H22年 H23年 H24年 H25年 H26年
カンピロバクター 362 337 268 227 306
ノロウイルス 399 297 417 328 293
サルモネラ属菌 74 68 40 34 35

注意:H26年:確定値(参考4)
    

補足(2015/6/26):食中毒事件数確認
    H27年5月末現在の大阪府及び厚労省のホームページによると大阪府のカンピロバクター食中毒件数23件患者数154名、この時点で平成24年を超えて発生しています。
    厚生省による5月末報告数全国で60件365人(別に未報告事例もあり平成24年を超えたかどうか不明です。)

 


参考1 大阪府食の安全推進課:食中毒発生状況速報(平成27年2月26日)

http://www.pref.osaka.lg.jp/shokuhin/shokutyuudoku/hasseijoukyou-h25.html
http://www.pref.osaka.jp/shokuhin/shokutyuudoku/hasseijoukyou-h24.html
http://www.pref.osaka.jp/shokuhin/shokutyuudoku/hasseijoukyou-h23.html

参考2 平成 26 年度食品の食中毒菌汚染実態調査の結果について -厚労省-
参考3 大阪府公衆衛生研究所:大阪府における感染性胃腸炎の届出状況と過去の推移
参考4 食中毒事件一覧速報 - 厚生労働省 -