<資料目次>

最終更新 2011.02.13

資料23 記録的猛暑で食中毒は増えたか?

内容
(1)大阪市の平均気温(8月)と全国での8月の食中毒発生件数
(2)大阪府における月別食中毒発生件数
(3)平均気温と発生件数が相関しない理由

はじめに

 平成22年の夏は近年まれに見る猛暑で、大阪市では猛暑日が昨年の3日に対し今年は31日ありました。この暑さには厨房で作業される方をはじめ、皆様たいへん気を遣われたと思います。
 この猛暑の夏を締めくくるため、過去の気温データを調べてみました。(図1)、(表1)


           図.1 大阪・東京 猛暑日日数比較 (ひぐらし歳時記から引用)

    猛暑日:最高気温が35℃以上の日(2007年4月1日より気象庁の正式用語として使用開始)

表1 大阪市 月平均気温(2001年〜)
背景色は平年値比較(:+ :− :±0)
(平年値統計期間は1971〜2000年)                     (ひぐらし歳時記から引用)
  2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 平年値
1月 5.2 7.2 5.1 5.8 6.2 5.5 7.5 5.8 6.5 6.1 5.8
2月 6.6 7.3 6.8 7.9 6.1 6.7 8.7 5.1 7.9 7.8 5.9
3月 9.7 11.6 8.4 10.2 9.2 8.6 10.1 10.8 9.7 9.6 9.0
4月 15.5 16.6 15.9 16.4 16.2 13.6 14.6 15.4 15.5 13.6 14.8
5月 20.6 20.0 20.2 21.1 19.5 19.7 19.8 20.0 19.7 18.8 19.4
6月 24.0 23.6 23.7 24.8 24.9 24.3 23.6 23.1 24.0 23.9 23.2
7月 29.2 29.0 25.3 29.5 27.5 27.2 25.9 28.7 27.3 27.9 27.2
8月 28.8 29.0 28.3 28.4 28.7 29.8 29.9 28.4 28.0 30.5 28.4
9月 24.4 25.1 25.9 26.2 26.1 24.6 27.2 24.5 24.5 26.7 24.4
10月 19.5 18.9 18.1 19.0 19.8 20.4 20.0 19.6 19.2 19.9 18.7
11月 13.2 11.1 15.5 15.2 13.7 14.8 13.7 13.4 13.6 13.2 13.2
12月 8.3 8.2 9.1 10.2  5.9 9.1 9.6 9.1 8.7 9.0 8.3
全年 17.1 17.3 16.9 17.9 17.0 17.0 17.6 17.0 17.1 17.3 16.5

(1) 大阪市の平均気温(8月)と全国での8月の食中毒発生件数


  平成22年の全国の発生件数が未確定ですが、厚生労働省の食中毒統計(8月発生分)を元に集計してみました。(図.2)
  図.2から平均気温と食中毒の発生件数に明確な関係は認められないことがわかります。


   図.2 8月の気温と食中毒

    (全国の平成22年は平成23年1月31日報告分までで、これ以降の報告を含みません)


(2)大阪府における月別食中毒発生件数

 大阪府における平成20年〜平成22年の月別発生状況(図3)*4 (平成22年食中毒発生状況速報(平成23年02月12日現在)
 近年の8月の谷はカンピロバクターの発生が春先と秋口に集中することによって生じています。(資料 22 カンピロバクターによる食中毒事例(年次変化) 1996年〜2009年)ただし、大阪府の平成22年のカンピロバクター食中毒は秋口集中が見られず、9〜11月は毎月3件、12月は2件の発生でした。
 結局、平成22年7月、8月が記録的猛暑であったにも係わらず、この2ヶ月間はこの3ヶ年でもっとも発生件数が少なかったという結果になりました。


平成22年9月〜12月に
発生した
食中毒の原因
原因 件数
カンピロバクター 11
サルモネラ属菌 4
ノロウイルス 5
図3. 直近3年間の食中毒発生状況(大阪府)



(3) 平均気温と発生件数が相関しない理由

 食中毒の原因物質は季節性が認められるものがあり、冬場のノロウイルス、夏場の腸炎ビブリオがその代表的なものです。
 また、夏場に増加するものとしては腸管出血性大腸菌、サルモネラ属、ブドウ球菌などが知られています。
 近年、腸炎ビブリオの激減、サルモネラ属菌食中毒の漸減によりノロウイルスを除く細菌性食中毒の発生が漸減傾向にあり、
これが、平均気温の高さと食中毒発生件数の増が相関しない理由と考えます。(図4) *5,*6,*7
 いずれにせよ、現在の処夏場に流行する食中毒で重要なのは出血性大腸菌である。
 間違っても暑い夏でも食中毒は関係ないと言うことはないので、特に野外でのバーベキューなどは腸管出血性大腸菌に対する警戒が必要だ。
 【1.肉のドリップが生野菜につかないよう気をつける。2.焼く箸と食べる箸を分ける。3.肉は中まで焼けてから食べる。】





 図4.菌別食中毒発生件数の推移

出処:
*1 ひぐらし歳時記  大阪市 月平均気温(2001年〜)      
*2 ひぐらし歳時記  大阪・東京 猛暑日日数比較(1990〜2009)  
*3 厚生労働省 食中毒統計
*4 大阪府 食の安全推進課
*5 IASRThe Topic of This Month Vol.17 No.7 (No.197)  <特集>腸炎ビブリオ 1994〜1995 図3.月別腸炎ビブリオ検出状況
*6 IASR The Topic of This Month Vol.30 No.8(No.354) サルモネラ症 2009年6月現在  図1.月別サルモネラ食中毒発生状況
*7 IASR The Topic of This Month Vol.22 No.8(No.258) ブドウ球菌食中毒 図4.ブドウ球菌食中毒事件数の推移 1995〜2000年